1. 地域材の「2020年問題」とは?
2013年10月に施行された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」があります。現在は、大型建築物を対象としていますが、2020年には、300㎡未満の建築も対象となり、「義務化」されることをご存じでしょうか?
この2020年に何が起こるのか、ということを簡単にまとめると、次のようになります。
新しい住宅を建てる時には、
(1) 夏に27度、冬に20度を保てるように断熱化をする
(2) 一時消費エネルギー量が一定枠で済むように設計をする
ということです。
このような改正の狙いは、
(1) 建物外被の高断熱・気密化
(2) 高効率設備利用の誘導
という点にあると言えます。
しかしながら、「(1) 建物外被の高断熱・気密化」は、地域材住宅とそれを支えてきた建築士、工務店などの皆さんにとって大きな問題になると言えます。
2. 地域材にとって何が問題なのか?
建築物省エネ法による2020年の適用範囲拡張が、なぜ、地域材にとって問題があるのでしょうか?
簡単にその問題の本質をまとめると、このままでは「土壁などを用いた伝統構法による家は、断熱・気密性能が無いということを理由に、改正省エネ法が義務化された暁には、建てることが困難となる」ということです。確かに、エネルギー効率の良い住宅をつくることは重要かもしれません。しかし、全ての地域にまんべんなく高断熱・気密性能を有した住宅が必要なのか、ということを考えないといけません。また、伝統構法のみならず、在来構法にとっても高断熱・気密性能という課題を解決することは容易なことではありません。
このように、近い将来を見据えただけでも、地域材を活かした美しい木の家を地元の業者さんたちと建て続けていくためには、林業地や地域の皆さんと共に新しい試みを共に創る必要があると言えます。このため、地域創生連携活動コンソーシアムでは、重要なミッションのひとつとして「2020年に新しい木造建築を意識ある地域で共創する」ことを設定しています。
3. 地域材の将来を考える人たちと共に「2020年問題」に挑む
このまま何もしなければ、2020年には「表し柱」の家を建てられなくなります。ですが、地域創生連携活動コンソーシアムを設立した有志たちは、本当に良い材を材も人も喜ぶ方法で建てたいと思っています。そのような意味において、地域材の2020年問題とは、「表し柱」の意味を改めて問う試みだと言えるでしょう。
特に、良い木を将来にわたって育てていく上でも「地域材住宅」は重要な課題であり、そこにおいて在来木造の知と方法をどのように継承し、時代にフィットさせていくかということが問題となります。しかし、このような壮大なハードルにひとつの地域で太刀打ちすることは根なんでしょうし、何よりも国の基準を変えていくような野心的な試みをしていく上で、様々な声をまとめていく必要があります。
だからこそ、地域創生連携活動コンソーシアムのような連合体を活用し、独自の地域材住宅の枠組みを構築し、広めていく動きをつくりたいと思っております。具体的には、弊社団を拠点として、森林組合、自治体関係者、工務店や設計士を巻き込んだ地域材活用システムを構築したいと思っております。
幅広い様々な立場の異なる方々のご参画をお待ちしております。やる気のある方がいらっしゃいましたら、遠慮なく事務局までお問い合わせください。
(一社) 地域創生連携活動コンソーシアム 代表理事
加藤久明